はじめに
2020年代に入って以降、「リスキリング」という言葉が注目され、リスキリングに積極的に取り組む人と企業が現れ始めています。ラクスパートナーズのITエンジニアを対象とした「リスキリング採用」もその一つです。
といっても、そもそも「リスキリングって何?」「スキルアップと何が違うの?」「何をどう学べばいいの?」と感じている方も少なくないはずです。
そこで、ここではリスキリングの定義やメリット、リスキリングの進め方などをわかりやすく解説しましょう。
リスキリングの定義
「リスキリング」という言葉は、どういう意味で使われているのでしょうか。類義語との違いを含め、そもそもの定義から確認していきましょう。
リスキリングって?
リスキリングは、英語で「Reskilling」と表記します。「新しいスキルを習得させる」という意味の他動詞「Reskill」のing形です。
ビジネスや人事戦略、人材育成、キャリアなどが語られる際には、「新しい知識やスキルを学び、身につけ、それらを活かして新しい仕事や職業に就くこと」という意味で使われています。
リスキリングとリカレントの違い
リスキリングと同じような文脈で、「リカレント教育」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
では、リスキリングとリカレント教育はどう違うのでしょうか。
「リカレント(Recurrent)」には「循環」「反復」「回帰」といった意味があります。
リカレント教育とは、そこから派生して「生涯学習」とも称され、社会人になってからも「働く⇒学ぶ⇒働く⇒学ぶ」を生涯繰り返すことをいいます。
学習分野は本人の関心があることすべてを含むため、広範囲におよびます。
リスキリングも「学び直し」という意味で使われることがありますが、学ぶことだけをさすのではありません。
リスキリングは、「学ぶ⇒新しいスキルを習得する⇒新しい仕事・職業に就く」というプロセス全体にかかる言葉です。
「新しい仕事・職業に就く」ことがリスキリングの目的ですから、学習分野は就労をめざす仕事・職種にダイレクトに紐づいた内容に絞られ、短期間に集中的に学びます。
リスキリングとスキルアップの違い
では、「スキルアップ」とはどう違うのでしょうか。
日本語として一般化した「スキルアップ」は、実は和製英語。
同等の意味の英語は「Upskilling」(アップスキリング)といい、「現在の職務上のスキルを向上させること」を意味します。
いうならば、スキルアップは今いる島(分野)に留まり、上方向へスキルを高めていくこと。それに対して、リスキリングは新しい分野のスキルを学ぶことによって、今いる島から横にジャンプし、別の島(新しい仕事・職種)へ飛び移るというようなイメージです。
リスキリングが注目される背景
2020年ダボス会議「リスキリング革命」
2020年1月にスイス・ダボスで開催された「世界経済フォーラム年次会議」(通称・ダボス会議)にて、第4次産業革命への対応を見据えた「リスキリング革命(Reskilling Revolution)」が発表されました。
そのなかで「2030年までに10億人のリスキリングをめざす」という目標が掲げられたことで、「リスキリング」という言葉が世界に広がっていったのです。
日本においても2022年10月、岸田首相が所信表明演説で「個人のリスキリングの支援に5年で1兆円を投じる」と表明し、話題になりました。
IoT・AI・ビッグデータによる技術革新
ダボス会議で語られた「第4次産業革命」とは、IoTやAI、ビッグデータを用いた技術革新のこと。これらのテクノロジーの進展によって、さまざまな産業でオートメーション化や省人化が加速し、これまでの職業や働き方に大きな変化が訪れています。
AIの進化によって、これまで人が担ってきた仕事をAIに代替できるようになれば、人はよりいっそう「人が付加価値をつくれる分野・役割」の技術を身につけていくことが求められるようになるでしょう。
こうしたドラスティックな変化に対応するべく、リスキリングの必要性が語られ始めているのです。
コロナ禍を契機としたDXの加速
コロナ禍を契機にリモートワークやオンライン会議の導入が一気に進み、それに伴ってさまざまな事業やワークシーンにデジタル化やDXの波が押し寄せています。
その一方で、各社がこぞってDXを戦略的に推進するなか、その担い手としてWeb・アプリケーション・インフラ・クラウドなどを手がけるWebエンジニアをはじめ、IT人材が圧倒的に不足しているのが現状です。
そこで、企業側は別分野で働いている人材をIT人材へリスキリングし、DX分野に人的リソースを振り分けるという取り組みを進めています。
国内外のリスキリング事例
では、企業が進めている従業員へのリスキリングの取り組みについて、どんな事例があるのでしょうか。国内外の参考事例を紹介しましょう。
大手情報通信企業(アメリカ)
長らく主力だったハードウェア事業が伸び悩んでいたため、ソフトウェア企業への変革を図るべく、ハードウェア事業に従事していた約10万人の従業員に対するリスキリングプロジェクトを実施。
リスキリングに成功した従業員が配置転換または昇進を実現し、10万人の雇用消失を防ぐことができました。結果、同社の売上は回復傾向にあります。
大手アパレルブランド(アメリカ)
日本でもおなじみの世界的なアパレルブランドも、コロナ禍の影響を受け、売上が激減。そこで、DX投資へ舵を切り、従業員に向けて機械学習や統計分析、コーディングなどを学ぶリスキリング講座を行いました。
その結果、店舗スタッフがデータサイエンティストやデジタルマーケティング担当へキャリアチェンジし、アプリ会員機能、AIによるレコメンド機能、3Dシミュレーション機能などの新戦略が成功。売上拡大を果たしています。
大手インターネット企業(日本)
間接部門を含む全従業員に対して、業務でAIを活用できるようになるためのリスキリング施策を実施。
データサイエンティストやデータアナリストなど高度な専門性を発揮するポジションへ振り分けることで、社内に膨大に蓄積されたビッグデータを活用した新サービスの創出や業務効率化のさらなる促進を図り、企業の付加価値向上をめざしています。
エンジニアがリスキリングを行うメリット
では、ITエンジニアの視点から見て、リスキリングに挑戦するメリットについて見ていきましょう。
デジタル技術のベースを活かせる
「リスキリングが注目される背景」でお伝えしたように、リスキリングの対象として着目されているのはIT・デジタル技術。DXを推進するにあたって、IT・デジタル技術を持つ人材は必要不可欠だからです。
つまり、リスキリングによってWeb開発・プログラミング、インフラ、クラウド、機械学習、データサイエンスなどの知識・スキルを新たに学ぶことで、自身の価値をいっそう高め、将来的にもニーズの高い人材をめざせるということです。
すでにITエンジニアとして何らかの経験があれば、現在保有する知識・スキルをベースにこうした技術を学ぶことができるため、とりかかりやすいといえます。
ITエンジニア経験をお持ちなら、専門分野を変えるリスキリングやキャリアチェンジも比較的スムーズに進めることができるでしょう。
キャリアの可能性が広がる
「今のままでは将来のキャリアが不安」「新しい技術を得られず、先が見えない」といった思いを抱くITエンジニアは少なくないはずです。
リスキリングによって新たな分野で知識・スキルを身につけることが、そうしたキャリアの不安や悩みを払しょくする突破口になり得ます。
実際に、アメリカの大手情報通信会社においては、リスキリングに成功した従業員は、リスキリングを行わなかった従業員に比べて高い評価を受け、昇給昇進を実現したというデータがあります。
また、リスキリングを行うことは、転職やプロジェクトアサインの際にも有利になります。自身のスキルシートの内容に厚みが増し、自らの市場価値を高めることで、多くの企業やプロジェクトから必要とされる人材になり得るということです。
スキル習得によってキャリアの可能性や選択肢を広げられ、自分で自分のキャリアをつくる「自律的なキャリア形成」が可能になるのです。
どうやってリスキリングすればいい?
リスキリングをどう進めればいいのか、ITエンジニアのリスキリングの手段について見ていきましょう。
社内研修・セミナーの受講
企業は自社の人材を成長分野へ振り分けられるよう、リスキリング対象者に向けて研修プログラムを実施している場合があります。
そうした社内研修・セミナーは就業時間内に受けられることも多いため、自身の負担を抑えながら学ぶことができるでしょう。
外部セミナー・オンライン講座の受講
めざしたいキャリアの方向性に合わせて、必要なスキルを学べるプログラミングスクールや教育機関などの講座を受講することができます。
オンライン上で自分の好きな時間に講座を受けられるスクールも増えていますので、働きながら学ぶことも可能です。
ただ、会社に自己啓発等の制度がない場合、あるいは制度に該当しない場合、受講費用は自己負担になります。
ラクスパートナーズのリスキリング採用
多くの未経験者をITエンジニアへ育成してきたラクスパートナーズが、ITエンジニア経験者向けの「リスキリング採用」を新たに始めています。
「インフラ・ネットワーク系からWebエンジニアにキャリアチェンジしたい」
「OJTばかりで体系的に学んでこなかったので、研修で改めて学び直したい」
など、新しい職種・分野へ挑戦したいエンジニア経験者のために、独自の研修環境を用意し、新たなキャリア形成を支援しています。
経験が浅いITエンジニアの方々も対象になり、豊富な育成実績やキャリア支援のノウハウを活かし、「研修⇒プロジェクトアサイン⇒キャリアアップ」のフォローが充実していますので、リスキリングをお考えなら是非前向きに検討してみてください。
まとめ
いかがでしたか?
DX・デジタル化の流れが加速し、ITエンジニアの価値がますます際立っていくなか、リスキリングは将来のキャリア形成にとって有効な手段になるはずです。漠然とした将来への不安を払しょくするためにも、リスキリングを検討してみるとよいでしょう。
まずは自分がどんなキャリアを描きたいのか、そのためにはどんなスキルを学び、実践する必要があるのかを考え、リスキリングに踏み出しはいかがでしょうか。